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東京高等裁判所 平成7年(ネ)3572号 判決 1995年12月27日

控訴人

右訴訟代理人弁護士

堀哲郎

鈴木幸子

深田正人

村木一郎

被控訴人

右訴訟代理人弁護士

時友公孝

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項と同旨

第二  当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決二枚目表九行目の「右目」を「右目の」と、同裏三行目及び同一〇行目から同一一行目にかけての各「後遺傷害」をいずれも「後遺障害」とそれぞれ改める。

二  原判決三枚目表五行目及び同八行目の各「後遺傷害」をいずれも「後遺障害」と改め、同裏六行目の次に改行して

「被控訴人は、中華人民共和国の国籍を有する者であり、平成二年三月二六日、就学の在留資格で本邦に入国し、その後数度の在留期間の更新を経た後、平成四年三月二四日、在留資格を留学に変更し、二度の在留期間の更新を経て現在に至っているものであるから、長期の日本滞在は困難であり、近い将来、本国に帰国して就労するであろう蓋然性が極めて高い。したがって、被控訴人の逸失利益は、症状固定時から三年間は日本での実収入を基礎とし、その後六七歳までは中華人民共和国の平均賃金を基礎として算定すべきである。また、被控訴人の慰謝料も、被控訴人がいずれ本国に帰国するであろうことから、中華人民共和国の所得水準、物価水準等を考慮して決めるべきである。」

を加える。

三  原判決四枚目裏二行目の「ナイフ」を「本件ナイフ」と改める。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所も、被控訴人の本件請求は理由があるから、これを認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決五枚目表八行目の「第九号証」の次に「、第二二号証の二、四」を加え、同九行目の「事実」から同行目の「右目」までを「事実のうち、被控訴人(昭和三五年七月二六日生)は、控訴人(昭和三三年一〇月六日生)の本件行為により、右目の」と、同裏七行目の「後遺傷害」を「後遺障害」とそれぞれ改める。

2  原判決六枚目表二行目の「三四一八万〇九四四円となる。」を「三四一八万〇九四四円(一円未満切捨て)となる。控訴人は、被控訴人がいずれ本国である中華人民共和国に帰国するであろうから、被控訴人の逸失利益は、症状固定時から三年間は日本での実収入を基礎とし、その後六七歳までは中華人民共和国の平均賃金を基礎として算定すべきであると主張する。原本の存在及び成立に争いのない乙第二号証の一、第三号証、第二二号証の四、第二四号証によれば、被控訴人は、中華人民共和国の国籍を有する者であり、平成二年三月二六日、就学の在留資格で本邦に入国し、その後数度の在留期間の更新を経た後、平成四年三月二四日、在留資格を留学に変更し、その後二度の在留期間の更新を経て現在に至っているものであること、被控訴人は、本件行為当時は、浦和市内のスナックに勤めていたが、本件行為により右目を失明したため、その後は定職に就いていないこと、被控訴人は、同国人で同じく留学の在留資格を許可されている妻丁と肩書住所地に居住しているが、丁は、浦和市内のカラオケスタジオで働いていることが認められる。これらの事実によれば、被控訴人は、その本国は中華人民共和国であり、同国人の妻とともに、留学の在留資格で数度の在留期間の更新を経て日本に在留している者であるから、いずれその本国に帰国するであろうことが予測されないではないが、その帰国の具体的な時期についてはこれを認めるに足りる証拠がない上、被控訴人の本国は日本の隣国である中華人民共和国であること、同国人の配偶者とともに日本に在留していることに照らすと、被控訴人は、今後とも、相当長期にわたって日本に在留する蓋然性は高いものと認められるから、このような被控訴人について、将来の一定時期に本国に帰国することを前提としてその逸失利益を算定することは相当ではなく、控訴人の前記主張は、採用することができない。」と改め、同八行目末尾の次に「控訴人は、被控訴人の慰謝料についても、その本国である中華人民共和国の所得水準、物価水準等を考慮して算定すべきであると主張するが、逸失利益の算定についての控訴人の主張に対する前記判示と同様に、右主張も理由がない。」を、同裏一一行目の「来日」の次に「(被控訴人は、前示のとおり平成二年三月二六日に、控訴人は同月二三日に、丙は平成四年一〇月二一日にそれぞれ来日した。)」をそれぞれ加える。

3  原判決七枚目表七行目の次に改行して

「当時、丙は、浦和市上木崎<番地略>所在の本件アパートに居住していた。」を加え、同裏三行目の「与野駅」を「本件アパートの最寄りの駅である与野駅」と、同一〇行目及び同行目から同一一行目にかけての各「右アパート」をいずれも「本件アパート」とそれぞれ改める。

4  原判決八枚目表二行目の「右アパート」を「本件アパート」と、同七行目の「つけたため、」を「つけたため、」と、同裏六行目の「駐車場を」を「本件駐車場から」とそれぞれ改める。

5  原判決九枚目表五行目の「したため」を「言ったため」と、同九行目の「駐車場」及び同裏一行目の「右駐車場」をいずれも「本件駐車場」とそれぞれ改める。

6  原判決一〇枚目裏一〇行目の「右駐車場」を「本件駐車場」と改める。

二  よって、当裁判所の右判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 吉戒修一 裁判官 大工強)

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